COLUMN
2022年09月29日
ローコード開発のメリットとデメリット、ツールの選び方を解説
カテゴリー:システム開発, テクノロジー
タグ:ローコード開発
ローコード開発は、エンジニアリソースの不足や開発コスト・工期の圧縮に対応する策として広まりつつあります。
また、DXの前段とされるデジタイゼーションやデジタライゼーション、アジャイル開発の推進においてもローコード開発は存在感を増しています。こうした背景からローコード開発ツール市場が盛り上がりを見せています。
では、ローコード開発ツールの選定では、どのような点に着目すればよいのでしょうか。
ここではローコード開発のメリットやデメリット、用途による選び方などを解説します。
ローコード開発の定義と歴史
ローコード開発とは「ソースコードの記述量を最小限に抑えたシステム開発手法」の総称です。一般的にはローコード開発ツールで提供されるGUIを操作することで、コーディング作業の低減が進みます。
ノーコード開発との違い
ローコード開発と混同されがちな言葉として「ノーコード開発」が挙げられます。しかし両者は全く別の手法です。主な違いとしては、以下3点が挙げられます。
- 対象の違い
ノーコード開発は非IT人材(業務部門の担当者など)を対象とした手法です。システム開発におけるコーディング作業を完全に無くすことを想定しています。このことから、プログラミング言語に触れたことがない人材であっても開発に携わることができます。
これに対してローコード開発の対象はIT人材(エンジニアや情報システム部門担当者)になります。その目的はコーディング作業の低減であり、開発作業の効率化です。定型的な処理の実装にかかる手間を省き、よりコアな部分へのリソース投下を促すものだと考えられます。
- 用途の違い
ノーコード開発は主にモバイルアプリケーションやWebサイトのフロントエンド部分の開発で使用されています。
これに対してローコード開発は、業務アプリやUIUXデザインなどに使われることが多いようです。
- 自由度、拡張性の違い
ノーコードで開発が可能な領域は「ツールが提供する機能の範囲のみ」です。したがって、高度で複雑な処理の実装や、独自性の強い機能の実装には不向きだと考えられます。これに対してローコード開発ツールは、エンジニアが自らコーディングを行うことができるため、ノーコード開発ツールよりも拡張性が担保されています。
ローコード開発の歴史
ローコード開発の概念は、1982年に出版されたジェームズ・マーティン氏による書籍「Application Development Without Programmers」の中で初めて紹介されました。
以降、コンテンツマネジメントシステム(CMS)の普及やアプリ開発・フロントエンド開発の効率化の波に乗り、徐々に知名度が向上しています。IT業界の市場調査を行う株式会社アイ・ティ・アールの調査によれば、2020年度のローコード開発市場は前年比24.3%増(515億8000万円増)に達したとのこと。また、グローバルでIT市場の調査を行っているガートナー社の調査では、2024年までにアプリケーション開発の65%をローコード開発が占めるようになるとの予測も示されています。
このようにローコード開発市場は急成長が予測されており、今後ますます一般化していくと考えられます。
ローコード開発のメリットとデメリット
ここで、ローコード開発のメリットとデメリットを整理しておきましょう。
ローコード開発のメリット
- 工数圧縮と品質担保の両立
前述したようにローコード開発では、ツールのGUIを操作することでコーディング作業の一部が省略されます。この機能を活用し、既存のアプリケーションでも使用している”よくあるパターン”のコーディングはGUI操作で行い、オリジナリティが高い部分に注力することができます。したがって、工数圧縮と品質担保を両立しやすいのです。
- 「短納期、高品質」を実現する開発手法との親和性
設計・実装・テストの工程を小さく頻繁に繰り返す「アジャイル開発」では、ローコード開発ツールが提供する手軽さやスピード感が活きてきます。また、開発とテストを迅速に行えることから、開発・運用のシームレスな連携を目指す「DevOps」との親和性も高いと考えられます。
- アプリケーション開発全体を効率化できる
ローコード開発ツールは、既存の「ソースコードジェネレータ(コード自動生成機能)」とは異なります。ソースコードジェネレータは、あくまでもプログラミング言語によって提供されるソースコードの補完機能です。これに対してローコード開発ツールは、UIを含めたアプリケーション開発全体に貢献します。
デメリット
一方、デメリットとしては以下2点が挙げられます。
- 一定以上のエンジニアリソースが必要
- ツールの用途や得意/不得意の把握が必要
特に重要なのが2つ目です。ローコード開発ツールは、用途や提供方式に応じて「汎用」「特定用途」「商用」「オープンソース」という具合に分類されます。汎用のツールであれば分野を問いませんが、特定用途では「Webサイトのフロントエンド向け」「UI/UX向け」「モバイル向け」といった区分けがあります。
また、オープンソースの場合、ノウハウの習得は自社のみで進めなくてはなりません。もしサポートが必要であれば商用ベースのツールを使うべきですが、こちらもにもツールごとに得意/不得意があります。もし社内にローコード開発の知見を持つ人材がいない場合は、こうした選定基準の部分でつまずく可能性があるのです。
ローコード開発ツールの選び方
そこで、ローコード開発ツールの選び方について一例を紹介します。ここで想定するのは中~大規模向けの企業システム開発です。
- ツールの守備範囲が、自社の技術/システムに合致しているか
ローコード開発ツールに限らないことですが、自社の技術・システムに合致するツールでなければ真価は発揮されません。
- 学習コストが低いか
企業システムの場合、学習コストの低さも重要な選定基準です。貴重なエンジニアリソースを最大限活用するためには、すぐ学び・すぐ動かせることが大前提です。
- 拡張性/連携性が高いか
既存のシステムと連携させながら安定稼働を目指すためには、改修・機能追加を行う必要が出てきます。したがって、拡張性や連携性の高さにも注目すべきでしょう。
- 運用まで効率化できるか
運用の効率化にも貢献できるツールであるかも、重要な基準です。クラウドサービスとして提供されるツールであれば、運用の自動化までを含んだサービスを提供していることがあります。
企業向けシステムに最適なローコード開発ツール「Hexabase」
弊社ではバックエンド開発に特化したクラウドサービス「Hexabase」を提供しています。Hexabaseはバックエンドを対象とするクラウドサービス「BaaS」の一種で、以下のような特徴を備えています。
- ワークフローやアクセス制御など企業システムを構築するために必要な機能を標準搭載
- リレーショナル機能とトランザクション機能を備えたRDBMSライクなデータストレージ
- ノーコードで提供されるフロントエンド用API
- クラウド上で提供される高度なセキュリティ対応
一般的な企業システムのバックエンドに求められる機能を高効率で開発できるほか、データベース構築、システム連携にも柔軟に対応します。また、セキュリティ対応が標準サービスに含まれることから、運用負荷の軽減効果も期待できるでしょう。
まとめ
今回は、ローコード開発ツールの概要やメリット、デメリット、選定基準について解説しました。企業向けシステムのローコード開発は、ツールの選定で成功が左右されると言っても過言ではありません。自社の特性に合ったツールを選定し、開発・運用の効率を上げていきましょう。