COLUMN
2022年12月21日
現代ビジネスにサービスデザインの視点が重要な理由とは?具体的な進め方も紹介
カテゴリー:サービス, ビジネス, 新規事業開発, 知ったかテックワード
タグ:DX, アジャイル開発, サービス開発
近年、サービスデザインという言葉が注目されています。機能が飽和する現代においては、顧客体験を含めたサービス化が重要という認識は多くの方が持っているのではないでしょうか。
サービスデザインは、顧客に対して高い価値を提供できるような優れたサービスを作り上げるために有効な手法です。
この記事では、サービスデザインという視点が必要となる理由や、実際の進め方について例を挙げて紹介します。
1. サービスデザインとは何か
「サービスデザイン」という言葉を聞くと、直感的に「サービス」を「デザイン」するという意味であると捉えるのではないでしょうか?「デザイン」とは様々な用途で利用される言葉ですが、「サービス」を「デザイン」するとは一体どのような意味なのでしょうか?ここでは、サービスデザインが求められるようになった背景も含めて解説します。
現代のユーザーが求めているもの
現代において、顧客は単にプロダクトの機能を求めて購買したりしません。プロダクトの使いやすさやプロダクトを利用して得られる体験などを含めた価値を求めているのです。これは、日ごろから皆さん自身が感じているのではないでしょうか。
たとえば「音楽を聴く機能」を提供できるプロダクト・サービスとしてはCDやストリーミングサービスが存在しています。自分の好みをプレイリストとして記憶しておいて、いつでもまとめて聞くことができます。
でも現在は、アーティストの音楽をライブで直接体験したり、ライブ会場でグッズを買ったりする方に価値が移っています。
このように、現代においては単なる機能は飽和状態であり、得られる体験などを含め「サービス」として提供することが重要となります。
デザイン思考による顧客体験設計
ユーザーにとって価値の高いサービスを生み出すために、デザイナーの思考方法を参考にしてユーザーの課題を解決する「デザイン思考」という考え方にに注目が集まりました。デザイン思考は、ユーザーをよく観察した上で問題を定義し、解決を目指すというものであり、ビジネスの現場でも取り入れられる機会が増えたのではないでしょうか。
サービスデザインによる事業開発
サービスデザインとは、デザイン思考の考え方を発展させて、組織やビジネスモデル・仕組みなども含めてデザインするものと整理すると理解しやすいといえます。
つまり、サービスデザイン=「サービス」を「デザイン」するとは、
・機能だけでなく、優れた顧客体験など含めてユーザーにとって価値の高いサービスとして提供できるように
・顧客体験そのもののデザインに加え、組織やビジネスモデル・仕組みを含めてデザインする
というものといえるでしょう。
2. なぜサービスデザインという考え方が重要なのか
サービスデザインが注目されている背景として、サービスデザインに取り組むことで新たな価値創造につながり、DX推進や新規ビジネスにおいて大きな変革をもたらすことができるという点が挙げられます。
これまでプロダクトの機能と品質を重視した、いわゆる「モノ」を中心にした商品開発やマーケティングが行われてきました。一方で、現代においてはお客様の体験を重視した「コト」への変換が必要とされています。サービスデザインの考え方により「コト化」を進めることで、新しいサービス開発を実現できます。
またDX推進の取り組みにおいても、サービスデザインの考え方が重要です。DXの目的は自社の製品やサービスに変革をもたらし、競合他社との優位性を確立することです。サービスデザインの考え方により、優れたサービスの提供につながります。
3. サービスデザインの進め方の例
それでは、具体的にサービスデザインはどのように進めていくのでしょうか。ここでは、「既存コーヒーショップの改善」をサービスデザインにより実施していくケースを例に、その進め方を紹介します。
リサーチ・分析
リサーチと分析は顧客を知るために実施されます。これらは取り組みの起点となり、共通認識や前提条件をつくるための大切なプロセスです。
たとえば、既存顧客へのインタビューやアンケートを通して顧客を知ることはもちろん、エスノグラフィ調査として店舗内の実際の顧客を観察し、どのような利用方法をしているかを調査することも選択肢となります。
コーヒーショップのケースであれば、結果として「7割の顧客が仕事目的で来店しており、広い机が求められている」「長時間店舗に滞在するが、注文されるのは9割のケースでコーヒー1杯のみ」「8割の顧客はリラックスできる落ち着いた空間を求めている」などという状況が見えてきます。
アイディエーション
次に、リサーチ・分析の結果に基づき、有効な改善アイディアを検討します。
たとえば、カスタマージャーニーを作ることで実際の顧客イメージを関係者間で認識合わせをした上で、ブレインストーミングを行うことでアイディア出しを行うことも一つの方法でしょう。
「7割の顧客が仕事目的で来店しており、広い机が求められている」という課題に対し、「一部の机を広くしコンセントやディスプレイなどを完備した上で、利用するために料金を払ってもらう」という、テレワーク対応サービスのアイデアを検討できます。
また、「長時間店舗に滞在するが、注文されるのは9割のケースでコーヒー1杯のみ」という問題に対して、「サブスクリプション型のコーヒーお替り自由サービス」などを開始して客単価向上を狙うことも検討できるでしょう。
プロトタイプによる仮説検証
アイディアをそのまま実現しようとすると、一般的に失敗するリスクが高まります。まずはプロトタイプとして形にして、小さく素早く実際の顧客や現場で試してみることが重要です。
たとえば、簡易的に「コーヒーお替り自由アプリ」を構築し、社員やロイヤルカスタマーなどに利用してもらいます。このような「あってもなくても良いが、あると便利である」種類のアプリにおいては、会員登録のスマートさや利用時の手軽さなど体験面が非常に重要です。実際に利用してもらった結果からユーザーの体験を確認しながらプロトタイプを発展させていくべきでしょう。
もちろん、最初からうまく行くとは限りません。ほとんどの場合は予想と違っているでしょう。それを失敗と捉えるのではなく、新しい情報を得られたと考えて改善を繰り返していくのです。これが、小さく始めるメリットです。
できるだけ何度も失敗すれば、それだけ知見が蓄積できお客様に対する理解の精度が高まることになります。
数多く失敗するにはスピードも重要です。スピードが速ければ、打席に立つ回数も増えるからです。
これは、アジャイル開発にも通じる考え方です。システム開発のアジャイルと新規事業開発のサービスデザインは連動してこそ効果を発揮します。
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サービス提供の拡大
満足のいくプロトタイプが設計できたら、少しずつサービス提供先を拡大していきます。
サービスは提供されれば終わりではありません。利用するユーザーからデータを継続的に収集し、改善していくことが重要です。
たとえば、サブスクリプションサービスの契約者に対してアンケート調査を実施したところ、別のニーズとして「自宅でもコーヒーが飲みたい」というものがあったとします。その場合、コーヒー豆の定期便サービスを実施するようにサービスを拡大していくことも検討できるでしょう。これは、すでに用意してあるコーヒー豆の小分け包装を用意するだけで始めることができます。
このように、サービスデザインの取り組みを一度きりのものでなく、組織の文化としていくことが非常に重要です。それにより、顧客中心のサービスを提供できる企業として変革を果たすことができます。
4.まとめ
この記事では、サービスデザインという考え方や、実際にどのように取り組んでいくかの具体例を紹介しました。機能が飽和した現代のビジネスにおいてはサービスとして体験を含め提供することが重要という認識は一般化しつつあります。サービスデザインというアプローチは、具体的にサービスを生み出していくために極めて有効な手法です。DXの推進においても、サービスデザインを活用することができるでしょう。
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