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デジタライゼーションによりDXの足掛かりを作る〜具体的な取り組みを紹介〜
2023年01月22日
日本企業におけるDXの取り組みが進む中で「デジタライゼーション」という言葉を耳にする機会も増えました。DX実現の前段階であるデジタライゼーションとは、いったいどのような概念なのでしょうか。
この記事では、デジタライゼーションの定義やDXにおける位置づけに加え、イメージをつかみやすいように具体的な例を通してその取り組みを紹介します。
1. デジタライゼーションの定義
様々な組織、企業がデジタライゼーションを定義していますが、ここでは例として調査会社であるガートナー社の定義を紹介します。
Digitalization
Digitalization is the use of digital technologies to change a business model and provide new revenue and value-producing opportunities; it is the process of moving to a digital business.
※1 ガートナーWebサイトより引用
筆者による日本語訳:デジタライゼーションはデジタル技術を使い、ビジネスモデルを変化させ新たな収益や価値を提供するものである。つまり、デジタルビジネスへの変化への過程といえる。
デジタライゼーションを端的に表現すると、デジタル技術を用いて業務や製造プロセス、ビジネスモデルなどを「変化」させ、新たな価値創造を行う取り組みといえるでしょう。
従来のIT化・システム化では、一般的に業務効率化や省力化を目的とし、既存の業務プロセス・ビジネスモデルに合わせた開発を行っていました。一方で、デジタライゼーションにおいては、自社の価値を高めるために、デジタル技術を利用し業務プロセス・ビジネスモデルを変えていく点が大きく異なるといえます。
2. DXにおけるデジタライゼーションとは
経済産業省 「DXレポート2」によれば、デジタライゼーションはDXの前段階とされています。
DXのファーストステップである「デジタイゼーション」とよく似た言葉ですが、微妙に位置付けが違っています。
具体的に、DXはどのようなステップで進めていくべきものなのでしょうか。
デジタル活用が進んでいない企業はデジタイゼーションから始める
従来、紙を中心としたアナログな業務・ビジネスを行ってきた企業が、いきなりDXをめざすのは難しいとされています。まずは、業務プロセスやビジネスモデル自体は変化させず、デジタル化をすすめるデジタイゼーションの取り組みから始めていきます。
デジタイゼーションは、従来の「システム化」「ペーパーレス化」に近い概念といえるでしょう。ただし、いわゆるシステム化と異なる観点として「データの活用を見据えた取り組み」を行っていくことがポイントとなります。DXのポイントとなるデータ活用基盤を作るために、デジタル化されたプロセスから収集できるデータの蓄積を意識した取り組みを進めます。
※関連記事:DXのファーストステップとなるデジタイゼーションとは? 具体例で紹介
部分的なDXといえるデジタライゼーション
デジタイゼーションに対して、次のステップに当たるのがデジタライゼーションです。上述のとおり、デジタライゼーションは業務プロセスやビジネスモデルを、デジタル技術により変化させるステップです。デジタイゼーションを通して収集したデータを分析し、顧客のニーズをとらえ、デジタル技術によりこれまで提供できなかった価値を提供できるようにしていきます。
デジタイゼーションはDXの萌芽段階であり、自社を部分的に変革している状態といえます。
この取り組みを通して、全社的な企業風土の変革であるデジタル・トランスフォーメーション(DX)を目指していきます。
最終目標であるデジタル・トランスフォーメーション
組織横断で全社的にデジタル技術を活用した業務プロセス・ビジネスモデルの変革を実現している状態が、デジタル・トランスフォーメーション(DX)とされています。この状態では、デジタル技術の活用は特別なことではなく、当然のこととして組織に根付いています。
このような取り組みを進めていくためには、イノベーションを引き起こせるいわゆる「イノベーション人材」の育成が重要です。イノベーション人材についてはこちらの記事で解説していますので、ご覧ください。
※関連記事:イノベーション人材とは?DX時代に求められるビジネス変革スキルと育成方法
3. デジタライゼーションの具体例
デジタライゼーションのイメージを掴むためには、具体的な取り組みを知ることが近道となります。
以下では、主なデジタライゼーションの例を紹介していきます。
具体例1.OMO戦略の実行
顧客への提供価値を向上させるアプローチとして、小売業におけるOMO(Online Merges with Offline)の取り組みが挙げられます。OMOとはECサイトなどのオンラインと、店舗などのオフラインを融合させることで新たな価値を提供する取り組みのことです。
たとえば、EC化が進むアパレル業界ではECの「試着できない」という欠点を解消するために、ECサイト上で気になった商品を店舗で試着できるサービスを提供する企業も現れています。これは、店舗での体験とECサイトでの体験を融合することで、顧客の不満点を解消し、新たな顧客体験を生み出している例といえるでしょう。
具体例2.製品検査業務のAI導入
製造業においては製品の外観検査にAIを導入する例もあります。完成品の外観検査を目視で行うためには、かなりの人手がかかります。一方で、検査を自動化する検査機は、設定に柔軟性がなく、少量・多品目に対応しにくいという欠点も。
そこで、製品をカメラで撮影し、AIにより正常品・異常品を分類させることで、業務を自動化する取り組みが進んでいます。人手をかけることなく製品の外観検査を行うことで、製品の検査プロセスをより効率的なものに変化させることができます。
具体例3.配送最適化
EC業界の発達とともに物流網の強化が求められている一方で、人手不足は深刻な状況にあります。特に、配送センターから最終消費者に届ける「ラストワンマイル配送」のプロセスは問題が多い部分とされており、経済産業省などを中心に国家的な対策が検討され続けています。
このような中、配送効率を向上させるために、車両・ドライバー・配送料・配送ルート・受け取り場所の最適化を行う事例も登場しています。この事例では、企業グループやアライアンス間で配送リソースを共有し、空きがある場合に相互に融通しあうことで、より効率的な配送業務を実現しています。
この取り組みを実現させるためには、車両やドライバーなどの各リソース状況をリアルタイムで把握しつつ、最適化エンジンによりリソースを最適配分する必要があります。デジタル化を進めることで、このように新たな価値の提供につながります。
まとめ
この記事では、デジタライゼーションについて、その定義や具体例を紹介しました。日本企業の多くはDXの取り組みが部分的になっている、つまりデジタライゼーションのフェーズから抜け出せていないという指摘があります。デジタライゼーションのフェーズにおいて成功事例を生み出し、それを全社的に展開していくことで、全社的なDXへとつなげていくことで、他社との差別化が可能となります。